原作で描かれなかった結衣やいろはといったヒロインたちとの結末が楽しめます。
ライトノベル・アニメで好評を博した「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」(通称:俺ガイル)の完結編「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」のゲーム版「やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完」のプレイ感想です。
原作ではあり得なかったヒロイン・サブヒロインたち(戸塚含む)とのストーリーがパラレルな世界観でそれぞれ描かれるのはゲームならではでしょう。
共通ルート(あらすじ)
原作10巻で描かれたマラソン大会以降でゲーム世界線へ分岐します。
マラソン大会から数日、商工会議所からの依頼がメールで学校に届いたことで、ちゃんとした認可を学校側から受けていなかった奉仕部は存続の危機に晒される。
商工会議所からの依頼を奉仕部で引き受け、無事に成功させる。そしてそれを活動実績として学校側にアピールし、奉仕部の存在を認めさせる。
今の活動形態を守るにはそれしかないと考えた八幡たちは、自分たちの居場所である奉仕部の部室を守るため、商工会議所からの依頼に挑む……というのがあらすじ。
商工会議所の依頼はバレンタインイベントの企画であり、どのヒロインの提案に乗っかるかでルートが分岐します。
分岐条件は非常に分かり易いので、イベント回収は簡単でしょう。ストーリーを楽しむことに集中できます。
以下、各ルートの感想です。
雪乃ルート
メインヒロインだけあって相対的にしっかりとストーリーテリングされてはいるのですが、どうしても原作が頭にあると没入しきれなかった感はあります。
とはいえ、原作と比較されるハンデを背負っている割によくまとまっていたと思います。
あと、ところどころで原作を意識しすぎてセリフをそのまま使っているところがありました。それ自体はいいのですが、使う場面が気になりました。
もう少し別の可能性も見たかったな、と。
より自分好みのストーリーがご希望なら、ネット上の二次創作・SSからお気に入りを見つけるのもよいでしょう。私のおすすめする作品群は下記記事からどうぞ。
結衣ルート
「お菓子の作り方」と「奉仕部」の関係性をうまく絡めた秀逸なシナリオでした。
このような形でゲームで救済されたのは、とても良かったのではないでしょうか。
いろはルート
「紛い物」と「本物」というキーワードを上手く活かしたシナリオでした。
常々、いろはの逆転ルートはクリスマスイベント直後にいかにフラグを立てられるか、そして原作通りのバレンタインイベントにもっていかないことだと思っていたので、今回のゲームのストーリーはまぁまぁ納得感のあるものでした。
欲を言えば、もう少しいろはの懐柔に時間をかけてほしかったというのはありますが、シナリオの長さ的にはメインヒロインの2人に匹敵するボリューム感でしたので、十分でしょう。
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沙希ルート
やっぱり、年明けから沙希が捲るのはなかなか無理があるよなぁ、と。
それでもなんとか説得力をもたせようと力の入れようは感じました。実際、沙希の逆転ルートに京華は不可欠で「家族」をキーワードにした展開が一番納得感あるので、そういった意味では悪くなかったです。
うまく小町をストーリーにからめていたのもこのシナリオでした。(小町が受験勉強佳境のタイミングの話しなので、絡めにくい)
ただ……いかんせん、最後があっさりだったのが残念です。もう少し八沙のシーンを描いてほしかったです。見たいのはそういうシーンなのに。
静ルート
先生ルートもやっぱり無理があるのですが、先生でしかできない展開ではあったので及第点といったところでしょうか。
もう少し丁寧だったらなお良かったと思います。
戸塚ルート
戸塚との「本物」の友情を見つけるルートです。
想像していたより綺麗にまとまっていた印象ですが、個人的には二人の友情を描くなら、うまく他の男キャラも参戦させてスラップスティック的に男臭い「努力・友情・勝利」シナリオに振り切っても良かったのかなぁと。
ラストシーンは割りと自分的には「アリ」でした。
八幡(ぼっち)ルート
誰も選ばなかったルートです。
ごくごくあっさりとバレンタインイベントが消化され、卒業エンドになります。
いわゆる「鬱エンド」でもないので、さくっとフラグだけ回収しておきましょう。
総評
結衣ルート、いろはルートがお気に入りです。
どうしてもヒロインが同じ学校であり、「バレンタインイベント」を誰と過ごすか、という分岐なため、ストーリーの展開やバリエーションに既視感はありました。
そしてなによりテキストボリュームがもう少しほしかったです。
メインの3人が個別ルートに入ってから2時間程度、それ以外は1時間強くらいだったので、いずれのルートも1.5倍から2倍くらいあったら、もっと没入できたと思います。
例えばいろはルートはとりあえず2年の段階では誰かとくっつくことなく、3年に進級し小町を加えてドタバタしつつようやく付き合い始めるとか、沙希ルートは小町と大志の受験にもう少しフィーチャーするとかです。
原作が面倒くさいほど丁寧に描いたので、そうすることでより充実したシナリオになったと思います。
しかしながら、すでに完結した作品についてこうやってゲームの形で違ったエンディングをファンに示してくれたことは僥倖で、いまはその世界観の余韻に浸りたいと思います。ありがとうございました。