2020/4/17発売の人気ラノベ「俺ガイル」アンソロジー「結衣side」の感想です。ネタバレありなのでご注意を。
概要(内容紹介より)
青春群像小説の金字塔「俺ガイル」がついに完結!
9年の軌跡とアニメ3期の放映を祝し、アンソロジー4冊を2か月連続刊行。
第3弾は、「由比ヶ浜結衣」にまつわる短編とイラストを収録。
うかみ、U35、春日 歩、くっか、クロ、しらび、戸部淑ら大人気イラストレーターと、川岸殴魚、境田吉孝、白鳥士郎、田中ロミオ、八目 迷、水沢 夢といった超豪華作家陣が参加!! 夢のコラボが実現しました。
さらにぽんかん(8)と渡 航の原作コンビも参加。
すべてかき下ろし作品。ここでしか読めない、珠玉の物語集!
作品別感想
こう見えて、由比ヶ浜サブレは賢い。(川岸殴魚、挿絵:クロ)
原作の夏休みに「結衣がサブレを比企谷家に預ける」という場面がありましたが、その前日譚になります。
結衣と優美子、そして沙希がサブレに芸を仕込むというお話。
八幡抜きでこの3人の組み合わせはなかなか新鮮で楽しめました。
優美子の「オカン」なところや、沙希の可愛らしい一面が上手く描写されていたと思います。この二人が好きな方は必読です。
サブレの「ひゃんす」にもクスリとさせられました。
結衣sideなのに、しょっぱなから結衣の影は薄めですが、オチは可愛らしく綺麗に落としており、幸先がよい冒頭作品です。
由比ヶ浜結衣はやっぱり料理ができない(境田吉孝、挿絵:U35)
はい、タイトルが全てを物語っています。
そういう作品。
個人的には、「ちゃんと作ろうとしているのに出来上がったのは奇想天外な代物」みたいなネタは食傷気味なのですが、結衣がかわいいからいいかなって。まる。
作中は時期的に5月頃でもあるので、3人の距離感もまた懐かしい感じがして味わい深いのでした。
どうしても、由比ヶ浜結衣は麺を食べたい。(白鳥士郎、挿絵:しらび)
「りゅうおうのおしごと」のゴールデンコンビによる作品。
「オンパレード」でも「やはり千葉のハイラインはまちがっている。」を寄稿されています。
本作は結衣が八幡と二人でラーメンを食べに行く話。
確かに原作内で、八幡は雪乃ともいろはともラーメン食べにいってるんですよね。あ、あと静先生とも。
で、これ、めちゃくちゃレベル高くない・・・?
「俺ガイル」として読んだときの違和感のなさが半端ないです。
4冊のアンソロジーを全て読みましたが、渡氏以外で一番原作に近いのは本作だと思います。
もちろん原作に近いことはひとつの評価軸に過ぎないわけですが。
それでも、結衣の一挙手一投足も原作と見間違えそうなほどで、「そうそう、結衣ってこういう子だよね」と読みながら感心しきりでした。
プロってすご・・・。
あと、やっぱり白鳥氏のあとがきだけなかったのはなんでですかね?
隠密スキル(LV.MAX)比企谷八幡の災厄(田中ロミオ、挿絵:戸部淑)
「人類は衰退しました」シリーズの田中ロミオ氏の作品。
「オンパレード」でも「思いのほか比企谷八幡の受験指導は的を射ている。」を寄稿されています。
隠密スキル(LV.MAX)がなんなのかは話の根幹に関わるので詳しくは触れませんが、本作は八幡が結衣と一緒に散髪するお話。
結衣は確か修学旅行〜生徒会編あたりで八幡の髪に触れていて、それってめちゃくちゃ好意の表れだと思うのです。
それはそれでよかったのですが、気になったのは結衣と会うまでの小町との掛け合いにかけた分量。
推測ですが、田中ロミオ氏は小町推しかと。
猫と団地とランドセル(八目迷、挿絵:くっか)
結衣が「ちょっと猫が苦手な理由」を掘り下げます。
原作を読み返してみたら、2巻に確かに結衣は昔団地暮らしで、猫がある日いなくなって、それから苦手というやりとりが確かにありました。
そうか、ここにフォーカスするのか・・・。
プロは目の付け所が違いますね。
内容は多くを語りませんが、明らかに他の収録作とは若干温度感が違う今作。
ちょっぴり切ない、こういう作品も楽しめるのはアンソロジーならでは、と思います。
今日も由比ヶ浜結衣は、その一言に思いをこめる。(水沢夢、挿絵:春日歩)
まぁ、「その一言=やっはろー」というのはすぐに想像つきます。
奉仕部がユーチューブの公式チャンネルを立ち上げることになって・・・という、いかにもアンソロジーらしい話です。
本作からは結衣がいかに奉仕部が大好きで、雪乃と八幡を大切に思っているかが伝わってきました。
いつか、その甘さを好きになることができる気がする。(渡航)
さて最後は作者による俺ガイル本編の後日談ですね。
アンソロジーの渡氏の短編がしっかりつながっています
雪乃sideではパパのんが登場しましたが、結衣sideでもガハマパパがでてきました。
本作の注目ポイントはやはり、少しずつ料理が上手になっている結衣の描写だと思います。
結衣の短編ネタとしては、
- サブレ
- 料理
- やっはろー
あたりが鉄板で、本書でも網羅されていますが、結衣といえば「壊滅的な料理スキル」なんですよね。
逆にいうと、結衣の料理スキルをあげさせられるのは原作者にしかできないことではないかと思っており、そこを描いてくれたことに読んでいて胸が熱くなりました。
後半のホテルのバーの一幕は若干安易な展開かな、と思いつつも、読者が求めているものをうまいこと見せてくれてありがとう、という感じです。
後日談をぜひ映像化してほしい!
まとめ
全体的にクオリティが高いように感じました。
個人的に俺ガイルでもっとも奥ゆかしいのは由比ヶ浜結衣というキャラクタだと思っており、本書でも様々な角度から彼女の魅力を感じることができました。
個人的ベストはやはり、「いつか、その甘さを好きになることができる気がする。(渡航)」ですね。
次点で「どうしても、由比ヶ浜結衣は麺を食べたい。(白鳥士郎、挿絵:しらび)」でしょうか。
「オールスターズ」も楽しみです。
※本ページのアイキャッチ画像は、小学館::ガガガ文庫 より引用。