村上醍醐です。
デービッド・アトキンソン「日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義」を読んでの書評・レビューです。
一言感想サマリー
日本人の勝算は、「最低賃金の引き上げによる生産性の向上」だというシンプルな主張を、主観的な感情論ではなく客観的なデータで示している説得力あるビジネス良書。
こんな人におすすめ
- ビジネスマンの方
- 今後の日本経済やビジネス環境に不安を抱いている方
- 日本を変えていきたい方
内容紹介
「日本人の優秀さ」こそ、この国の宝だ――。
日本在住30年、元ゴールドマン・サックス「伝説のアナリスト」、
日本文化に精通する「国宝の守り人」、日本を愛するイギリス人だから書けた!外国人エコノミスト118人の英知を結集して示す、日本人の未来。
「人口減少×高齢化」というパラダイムシフトに打ち勝つ7つの生存戦略とは。
感想
私は本書を読んで、日本の勝算のキーワードを1つに絞るとすると、生産性の向上に尽きると考えました。
日本は人材評価が高いにもかかわらず、生産性は他の先進国に比べて低く、潜在力がある(はず)と著者も評価していますし、そのようなデータ(※)も示されています。
※本書の良いところは、随所で海外の論文が引用され端的に論拠が示されるところです
では、どうやって生産性を高めるかというと、最低賃金の引き上げが有効と提言しています。
日本企業はこれまで、人件費を削ってコストを下げることで、商品の値段を下げて競争してきたことは周知の事実です。
しかしながらその競争が、生産性を奪ってきたというわけです。
最低賃金を引き上げれば、人件費を削ることができなくなり、経営の質の向上、技術の上手な利用等、生産性を高める努力をするようになります。
とはいえ、ただ「賃金を上げろ」では実現性に欠けます。
(よくみるビジネス書や雑誌では、このレベルの結論で終わっているものがほとんどだと思っています)
本書ではその先にまで踏み込んでおり、具体的に最低賃金を引き上げるためには企業の合併など企業規模を大きくすることも必要で、これに関しては国を挙げて取り組むべきであるとしています。
また、生産性向上につなげられるよう、経営者や被雇用者の人材トレーニングも重要である主張はとても理に適ったものであると思いました。
総評としては、一見不可能にも思える「人口が減少し続ける日本人がこれからどうすべきか?」という課題に、科学的視点で迫りつつ、とても理解しやすい構成でわかりやすく述べられているビジネス本の良書です。
久しぶりに「目から鱗が落ちた」という実感を持ちました。
これは本当におすすめしたい本です。
ビジネスマンはぜひ一読いただきたいです。
そして大事なのは、読んで得た新たな知見を、行動に移すことだと思います。
私も自分そして会社の生産性を上げるために、どういうことができるか、考えているところです。